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  • 執筆者の写真雅 -masa-

音叉セラピストの見た音の風景 vol.1 /音楽と音楽療法のはじまり 

更新日:1月5日

音楽の始まり


昔、原始時代の人々は毎日の食べ物を狩猟採集によって確保していました。

他の動物たちと同じように周りの物音に対してとても敏感に反応し、さまざま音から、その音が意味することを的確に捉え、自分や仲間の身を守っていたと考えられます。

動物の鳴き声や足音、草木の揺れる音、人の叫び声などから危険を判断すると、緊張が走り、周りに注意を傾け、それを身の安全のために利用しました。


音は、身の安全確保のために非常に大切なものの一つだったのです。


このように、”危険な音”を耳にした時、人は身の安全を最優先に考え、動きを止め、鳴りを潜め、事態に備えます。

そんな時には、美味しく、楽しく食事などしていられませんし、食べ物の味すら変わってしまうことでしょう。

またこの逆に、耳や目や肌など、五感で安全を確認したときには、緊張が解け、安心して食事ができることでしょう。


そして人々によって社会が作られ、政や人々の間に上下の階層ができる時代になると、人が病気になると、それは死者や先祖の霊が悪霊となり、人に取り憑いて、その人を苦しめていると考えられました。

病気を治すためには、取り憑いている霊を追い払えばよいと考えた古代の呪術師(シャーマン)たちは、悪霊が退散したくなるような、身震いするような、恐ろしい音を作り出します。

また他にも、雨乞いのために太鼓をたたくなど自然現象を模倣することでその現象を起こすなど、音は音楽が誕生するずっと以前から身近な生活で使われており、それが音楽の起源だと言われています。


やがて病気は悪霊が取り憑いたために起こることと考えていた時代が終わると、音楽は悪霊を追い払うための呪術として使われるものではなくなり、楽器や歌が生まれ、”調和”や”美”を備えた音となり神の感受性に訴え、機嫌を直すためのものとなりました。



音楽療法の始まり


・ピタゴラスの音楽療法

紀元前500年頃、古代ギリシャの数学者・自然哲学者ピタゴラスは、現在の南イタリアにあたるギリシャ都市クロトンにて、”魂の浄化のために数学を研究する”という宗教的思想団体ピタゴラス教団を設立します。

ピタゴラスの教義は、”万物は数で出来ている”、”人間は数によって支配されている”ということで、数、調和、宇宙の概念を捉え、理解し、応用することを試みました。


中でも”調和”はピタゴラスにとって重要な概念で、

音についても、音と数の関係からピタゴラス音律を作り出し、この音階の法則の発見意義を”調和的関係性は人間によって作られるものではなく、普遍のものとして宇宙に存在する”としました。


さらにピタゴラスは、音楽は日常の人々が演奏する楽器や歌ばかりでなく、人間の身体の中にも存在し、私たちの体は健康と呼ばれる調和のとれた心と体の状態があると考えました。


人が病気になるのは心と体の”調和”が乱れているためと考えたピタゴラスは、それを調節するため、自ら心身の乱れを調節し、魂を鎮める音楽を作曲し、患者に美しい音楽を聞かせることによって、心と体の乱れを鎮め病気を治療しようと考えました。


そして、音楽は宇宙にも存在し、心が浄化できればその音楽を聴くことができると考え、心を清める生活を弟子たちにさせました。


・アリストテレスの音楽療法

アリストテレスは、紀元前300年頃、マケドニアのスタゲイラに生まれた古代ギリシャの哲学者です。

紀元前550年ごろから紀元前220年ごろの古代ギリシャでは、”ギリシャの悲劇”といわれる物語演劇がさかんに行われており、アリストテレスは、観客が悲劇を好むのは、悲劇を見ることで自分の心が浄化されるからだと考えました。


悲劇の物語を見て、登場人物が大変な状況に陥ったり、悲しい結末を迎えたりすると、観客はそれに共感します。自分に重ね合わせ、その主人公の心情の動きを自分のこととして悲しみ、苦悩します。心の奥底の感情は揺さぶられ、涙を流します。

アリストテレスは、この感情を経験することで、観客が自分の中の悲しさや恐れと向き合い、自分の心の中が整理され、自分の感情や考えに気付き、学びや成長が生まれ、結果として人をより良い方向に導く効果があると考えたわけです。


アリストテレスは、この"悲劇が観客の心に恐れと憐れみの感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果”を”カタルシス"と呼びました。


精神医療においては”抑圧されていた心理を意識化させ、鬱積した感情を除去することで症状を改善しようとする精神療法”を指し、さらに、一般的には”心の中にあるわだかまりが何かのきっかけで一気に解消すること”として使われる言葉です。


この”カタルシス”は楽観的に明るく、楽しくしようという思考では到達できない地点であり、また、心の中の鬱積とした感情や葛藤を自由に表現されているところを見ることによって、心の緊張を解く、とも考えられました。


さらに、人々の心が恐れや憐れみの感情によって浄化を起こす作用は、熱狂の感情によっても起こると考えました。アリストテレスは、人々が魂を興奮させるときにも、その後心が清めを受けたように正常になるのを見たのです。

興奮的な音楽によって、興奮がかえって鎮められるということです。

そして、憐れみ深い人、怖がりやすい人、また、その他の人々も、感情が少しでも襲ってきて、心の奥を揺さぶるかぎり、心は浄化を起こし、心が軽くなり、快さを味わうなどの経験をするに違いないと考えたのです。


・ふたつの治療法

このピタゴラスとアリストテレスの音楽療法概念は、全く逆の治療法を指し示しています。

ピタゴラスは”心と体の調和を回復させるために調和の音楽を用いる”というもので、不安な状態でも、興奮状態でも、恐怖の状態でも、それを鎮めるために用いる音楽は調和の音楽と説きました。

アリストテレスは、感情を揺さぶられ、そのときの心の状態と同調し、泣いたり笑ったり、自由に振舞うことが心の調和を回復させると説きました。


このふたつの全く逆の治療法が、現在、音楽による癒しを勉強するための重要な基礎となっています。



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